皮脂欠乏性皮膚炎(乾燥・バリア機能低下系)
—より詳しい対処方法とカラーリングの当店の注意事項
冬場の乾燥、加齢、過度な洗浄などで頭皮のバリア機能が低下し、痒みやムズムズ感に悩まれるお客様が非常に増えています。特にカラーリング時に症状が出やすいこのデリケートな頭皮に対して、当店が推奨する対処法と、安全に施術を続けるための対策を詳しくご説明します。
皮脂欠乏性皮膚炎:なぜ「超敏感肌」になり、ヘアカラーがしみるのか
この皮膚炎の頭皮は、一見荒れていなくても、バリア機能が崩れて内部の神経が過敏になっています。これが、わずかな刺激でも「ムズムズ」「チクチク」といった知覚過敏として症状に出る原因です。
- バリア機能の「隙間」 施術前、ワセリンや保護ローションを使用しますが、皮脂欠乏性皮膚炎によって頭皮の細胞間のバリア(セメントのような役割)が崩れているため、塗布した保護剤の下や、わずかな塗りムラから、カラー剤に含まれる過酸化水素や染料が浸透しやすくなります。
- 炎症の「火種」 視覚的に大きな荒れがなくても、頭皮の内部ではバリア低下により微細な炎症(サブクリニカルな炎症)が起きています。この状態でカラーの刺激が加わると、神経が反応してムズムズ、痒みという形でサインを出します。これが、皮膚科で処方されたステロイドが効く理由です。
- 保護ローションとカラー剤の化学反応 使用した保護ローションの成分がカラー剤のアルカリや過酸化水素と反応し、熱を発生させたり、刺激物質に変化したりするケースもごく稀にあります。
① 保護したのに痛む!ラップ密閉が最悪な理由
ワセリンなどで保護しても痒みが出たという経験は、バリア機能が崩壊している証拠です。特にカラー中にラップ密閉を行うと、カラー剤の熱とアルカリ成分の蒸気が頭皮に閉じ込められ、刺激が劇的に高まります。保護剤のわずかな隙間から刺激成分が入り込みやすくなるため、ラップや外部加温(ホットキャップなど)は絶対に避けなければなりません。
② 間違いやすい頭皮のpH:「弱酸性バリア」を守る
人間の皮膚(頭皮含む)は、本来pH 4.5〜5.5の「弱酸性」で保たれ、外部刺激から守られています。カラー剤は一時的にアルカリ性に傾けますが、頭皮の本来の状態は弱酸性です。
アルカリ性の洗浄剤(石鹸シャンプーなど)を使うと、この大切な弱酸性のバリア機能が破壊され、皮膚炎の修復を妨げてしまうリスクがあるため、避けるべきです。
【最優先】カラーを続けるためのホームケア徹底戦略
カラーを安全に継続するための鍵は、頭皮を「刺激に負けないバリア機能を持つ状態」に戻すことです。
1. 炎症が完全に治まるまで待つ
- 皮膚科で処方されたステロイドローションは、赤みやムズムズといった炎症の「火種」を完全に消すために不可欠です。
- 症状が治まっても、念のため、さらに1週間ほど**頭皮を休ませてから、次のカラーの計画を立ててください。少しでも不安が残る状態での施術は厳禁です。
2. 弱酸性の「保湿&油分」でバリア修復
- 頭皮は顔と同じ肌として扱います。朝晩の洗顔後に高保湿化粧水(セラミド・ヒアルロン酸配合)を指の腹で優しく馴染ませてください。
- 化粧水後、頭皮用ミルクやオイルをごく少量使用し、水分が逃げないよう油分でしっかりとフタをすることが重要です。
3. シャンプーの選定と温度
- 推奨:*頭皮の自然なpHに近い弱酸性のアミノ酸系、またはベタイン系のシャンプーを選んでください。バリアを温存しながら、優しく汚れを落とせます。
- NG:洗浄力の強い高級アルコール系、または高アルカリ性石鹸シャンプーは避けてください。
(※石鹸シャンプーが推奨された自由:かつて、市販の主流なシャンプーの多くは洗浄力が非常に強い高級アルコール系(例:ラウリル硫酸ナトリウム/SLS)の成分が主でした。これらのシャンプーは洗浄力が強すぎるあまり、頭皮の乾燥やトラブルを引き起こす原因となっていました。皮膚科医が石鹸シャンプーを推奨されるのには、そうした過剰な合成界面活性剤の使用を避け、「余計なものを入れないシンプルな洗浄」を求めることが一昔前の有効なアプローチであったと推測されます。 - お湯の温度:*熱いお湯(40℃以上)は皮脂を取りすぎ、バリアを壊します。38℃前後のぬるま湯で洗髪・すすぎを行ってください。
皮脂欠乏性の方へのカラーリング厳守事項
【最重要ルール】ゼロテクニックと無加温
- 当店では、頭皮に薬剤を付けない「ゼロテクニック(根元ギリギリ塗布)」という選択肢があります。
- ラップやホットキャップなどの外部からの加温(無加温)は行いません。室温での自然放置で安全に染めます。
その他の対策
- 薬剤の選定:*刺激の少ない低アルカリ・低ジアミン処方のカラー剤や、保護効果の高い薬剤を選定します。
- W(ダブル)保護:高密着型のサロン専用バリアクリームを丁寧に塗布し、保護力を高めます。
- 流し前の鎮静:*カラー剤を流す前後には、頭皮の冷却や弱酸性ローションなどでで頭皮の熱を奪い、炎症反応を抑えるケアを行います。
お客様のカラーを続けたい」という願いを叶えるため、ご自宅でのバリア修復ケアと、サロンでの徹底した刺激回避対策の両輪で、髪と頭皮の健康をサポートさせていただきます。